昨日、東銀座にある老舗映画館、東劇にて「ジゼル」を観た。
ちまたではクイーンの「ボヘミアン・ラプソディ」が大評判だっていう中、古典的バレエ作品を映画館で、しかも3500円という「ちょっと高すぎじゃない?」って値段を払ってまで観る私はモノ好きに他ならないが、昨日は表参道にも出掛けていて、なら東銀座も遠くないよね、というノリみたいなもんで観てきたわけだ。
アクラム・カーン版「ジゼル」が劇場公開、古典バレエを新解釈で描く - 映画ナタリー
サテ、まるで何でもないことのようにバレエ作品を観た、なんて書いているが、私にとってもバレエは馴染みのない世界だ。
当然おどったことはないし、タイツを穿いたこともない。
東劇ではメトロポリタン歌劇団によるオペラのライブビューイングを観ることはあるが、おそらく同じような位置づけとして上映が決まったのだろう。
と、まるで何でもないことのようにオペラを観ることはあると書いているが、実はオペラはよく観るのだ。
なぜなら、私はモノ好きだからだ。
まぁ、実際の舞台はそれこそ値段が高すぎて無理なんで、映画館で観ている。
で、東劇はその上映館として馴染みのある場所なんで、今回のバレエにかんしても、わりと敷居の高さは感じなかったわけだ。
そんなこんなで「ジゼル」を観た。
この手の古典芸能は事前にあらすじを理解しておいた方が楽しめる。というか、舞台では踊りですべてを表現しているから、あらすじを知らないとついていけない。
私も事前に予習した。私なりの解釈でカンタンなあらすじを書いておこう。
作品は2幕モノで、1幕目は、男女間の四角関係の顛末が描かれる。
主人公である町娘ジゼルと、町の領主の息子であり婚約者もあるアルブレヒトとの恋と、ジゼルに想いを寄せる町の青年、それにアルブレヒトの婚約者である女性が加わる。
まぁ要するに、せっかく恋仲になったジゼルとアルブレヒトではあったが、アルブレヒトの浮気を町の青年が暴き、アルブレヒトの婚約者にも言い逃れのできないところまで追い詰められ、しかもよりにもよってジゼルとその婚約者は互いに結婚を控えた身として仲が好かったりする、という、アルブレヒトにとっては針のムシロ状態。
が、もっとショックを受けたのはジゼルの方だった。もともと心臓が弱いという設定ではあったものの、なんと衝撃のあまり死んでしまうのだ。
「いや、いくらなんでも死にはしないだろう?」とか「こんなんで死んでしまうなんて、アンタよくその歳まで生きてこられたね?」とか言ってはイケナイ。そういうモノなんだから。
ここまでが1幕。で、次が2幕。
ジゼルは亡霊になる。
いや、もうすこし表現を可憐にしよう。
ジゼルは精霊になる。
まず、ジゼルの墓を訪れたのは町の青年。彼は自分の行いを悔いているが、ジゼルと、その墓にたむろすコワイ幽霊(精霊?)たちは彼を許さない。なんと彼がチカラ尽きるまで踊らせるのだ。
ん? なぜ踊らせるのか?
それは、この作品がバレエだからだ!
結果、彼は本当にチカラ尽きて死んでしまう。ご愁傷さまである。
で、次にやってきたのはアルブレヒト。
精霊の親玉は、アルブレヒトも死ぬまで踊らせようとする。しかし、ジゼルによって助けられる。なぜなら、浮気はショックだったけどやっぱりアナタのことが好き、と…。
サテここまでは、私も事前の準備として下調べしながら書いたモノだ。あまり期待値が高くないのは文面からもお分かりだろう。
しかし…
しかし、だ。
これがトンデモない傑作だったのだッ!!
いやね、これマジでビックリするよ。なんだこれ? スゲーっ! バレエに対する概念というか、こっちが勝手につくった先入観なんてすべてぶっ飛ばす。
出足から度肝を抜かれる。鳥肌もんだ!
カッケーっ! これ!
舞台も衣裳もスバラシイ。
そして、ラストにいたってはワタシ大泣き。
あぁ、いま思い出しても泣きそう。
すげーこれ! 大推薦です!
と、いささか興奮ぎみにお伝えしたが、いやはやホント、凄かった。
物語もアルブレヒトと青年がジゼルをめぐって争う、ぐらいのシンプルな構図になっていて、分かりやすかった。
そしてラスト、精霊になったジゼルとアルブレヒトの切ない踊りにはヤラレタ。
上映期間がとてつもなく限られてるんで、ご都合よければ是非!
というか、ご都合ムリヤリ合わせてでも行った方がいい。
私はもういちど行く。
なんだか興奮しすぎでやたら長い投稿になっているが、最後に東劇という老舗映画館についてひとつ。なにしろそのツクリが古い。館内の座席が最前列から最後尾までほぼフラットに並んでいる。なかなか見る光景ではない。こんな、ちょっとレトロな雰囲気で観る大傑作。オススメである。