高北謙一郎の「物語の種」

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アルチンボルド

 

アルチンボルド (ニューベーシック) (タッシェン・ニューベーシック・アート・シリーズ)

アルチンボルド (ニューベーシック) (タッシェン・ニューベーシック・アート・シリーズ)

 

 

アルチンボルドは、想像力を刺激する画家である。観ていると、アタマの中にたくさんの映像が浮かんでくる。壮大な物語ではない。のどかな日常だ。日常に、あの奇妙な絵が紛れ込んでくる。

なんでもないことのように。

 

 

あ、そもそもアルチンボルドって誰? 

 

そんな方のために、

 

説明しよう(タイムボカン風?)!

 

アルチンボルドとは、16世紀の後半にハプスブルグ家の宮廷画家として活躍した画家である。細かいことはすべてすっ飛ばすが、さまざまな花や野菜を組み合わせて人物に仕立て上げたポートレート的絵画は、当時も今も衝撃をあたえ続けている。

 

…うん、説明になってないな。

百聞は一見に如かず。小難しいことはサテおいて、この絵のインパクトはたしかに衝撃だ。

 

アルチンボルド アートコレクション

アルチンボルド アートコレクション

  • 作者: リアナ・デ・ジローラミ・チーニー,笹山裕子
  • 出版社/メーカー: グラフィック社
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おととしの夏だったか、上野の国立西洋美術館で「アルチンボルド展」が開かれた。

私も観に行ったが思いのほか盛況でおどろいた。

とはいえ、ほとんどのひとが「アルチンボルドって誰?」という感じもあって、ようするに彼自身は知られていないが、その絵は見る者の興味を惹きつけて止まない、ということなんだと思う。

 

この時の企画展の目玉は、

なんといっても「四季」。

 

そう、この花野菜ポートレート(勝手に命名した)は実は何度も試みられていて、いろいろなバリエーションがある。その中でも春夏秋冬、その季節の花々や収穫される野菜をもちいての「四季」シリーズは、彼の代表作といってもいい。

その4点すべてが出そろうというのだから、観に行かずしてナントしよう?

 

 

 

 

 

花野菜男爵》

 

ある晴れた日のことだ。農民たちが畑で作業をしていると、畦道の向こうから花野菜男爵が歩いてきた。

身分は高いが気さくなオジサンで、領地内の農民たちからも慕われていた。

「いい天気だねぇ」と、花野菜男爵が朗らかに告げる。顔の色つやがいい。明らかにその日の朝に収穫した野菜たちを拾ったのだろう。

「そうですなぁ」と、初老の農民が応える。男爵を前にしても、これといった緊張感はない。ふたりはくつろいだ様子で世間話を始めた。

「ところで君、そのニンジンをひとついただけないかな?」花野菜男爵は、農民の手の中にあった採れたてのニンジンを指さした。「さっき、ひとつ落としてしまってね」

「それはタイヘンですなぁ。よろしいですよ、持っていってください」

気の毒に思った農民は、そのニンジンを手渡した。花野菜男爵はたいそう喜ぶと、礼を言って畦道を去っていった。

 

 

なんて景色が、一瞬にしてアタマに浮かんだ。

恐るべし、アルチンボルド

のどかな秋空の下、畦道を去っていく花野菜男爵のうしろ姿。翌日の朝には、どっさりと野菜の山が農民の家の前に積まれているはずだ。なんてことまで妄想してしまった。

 

 

いい絵とは、観る者の想像力を刺激する。

その想像が優れたものになるかどうかは、ともかくとして。

 

でも、いつか花野菜男爵には会える気がしている。田舎の畦道を歩いていると、そんな気になってくる。

だってこんなオジサン、その辺にいそうじゃない?

 

 

サテ、なぜ今日は何の脈絡もなくアルチンボルドの絵のお話になったのか。

数年前に行われた展覧会の話題なんて、今さら知っても何の役にも立たないだろうに。

 

実は2週間ほど前、実家から大量の野菜をいただいた。毎日毎日その野菜を消費すべく食べまくっている。

ちなみに昨夜も鍋であった。

 

で、あぁそれならアルチンボルドだな、と。

 

はい、そんなくだらない理由でした。

 

オシマイ。